見た目、大事です。
外観デザインは「化粧」と意味合いがよく似ています。身だしなみと言いますか。最近は男性もスキンケアをする人も多くなりました。内面の満足と外面を意識することですね。実は、外観デザインに拘る方は極端に少ないのが現状。それは、日本の住宅事情が大きくかかわっています。
ヨーロッパなどは街並みの景観を維持するために厳しい制限を設けてます。日本は自治体などのルールを設けている地域もありますが、基本自由。最近ようやく戸建て分譲住宅で付加価値を上げるために景観を整えるようになりましたが、個別の住宅の場合、建物本体に対しての金額の比重が大きく、外構は別途という業者も少なくありません。また、外観デザインを意識した設計をする建築業者に当たることはかなり低い確率になります。平面のプランを優先し、外観(見映え)を考えた提案には、時間がかかるため提案は避ける傾向であると考えられます。非常に残念な現状です。
ここで、ちょっと見た目を良くするマジックがあります。それは、夜の外観をさりげなく演出すること。ただの四角い箱も、角に小さなひかりを作るだけで見た目が変わります。植栽の影を外壁に映すだけでも見た目が変わります。
見た目、大事です。
この見た目のデザインを大事にしながら「Emotional」感情に響くLightingも同時に考え設計します。
ホテルの外構照明やリゾート施設の屋外照明は色々と参考になります。演出をメインに考え、そのおこぼれの光で必要照度を確保する考え方。そこには照度計算をする概念すらありません。人間の目はとても高機能です。暗ければ勝手に瞳孔が開きわずかな光を取り入れます。しかも自動で。このような環境下における理想の光設計とは「眩しさを抑え」その場に合った「ほどよい明るさ感」を考えること。眩しさは、不快グレアと言い無意識に不快を感じる眩しさのこと。直接光源が見えない位置からの照明効果が実現できればおのずとその空間の品が上がります。これは無意識に心地よさを感じることに繋がります。植栽をライトアップしている光景は見たことがあると思いますが、出来る限り光源が目に入らないようにグレアカットフードやハニカムルーバーなどを使い照明器具の存在を消す努力を惜しまなく検討します。そして明るさ感。「感」です。感じる光です。この「感」に無意識に訴える良し悪しを考えた照明設計がEmotional Lightingの真髄です。私は特にこのエモーショナルな光を大事に扱います。
例えば、外壁に葉っぱの影を映す照明設計。壁面に葉っぱの影があったとしても、その影を見て「ああ、素敵な影だね」と思う人はまずいません。しかし、しかしです。風に揺られた影が空間全体のスパイスになるんです。影が奥行きを出し、揺れる影が夜の演習に動きを与えます。
この2枚の葉の影。どうでもいいことに思えるかもしれないですが、同じ位置から1灯の場合と2灯の場合、影の濃さに濃淡が出ます。影の奥行きとはこういうことで、これが空間の「なんか素敵!」に繋がります。
夜はまわりの景色が消えますから、影でさえクローズアップされて目に飛び込みます。これが無意識に感じる演出の醍醐味なんです。
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