照明設計の手順。事前調査が「カギ」
① 現状の把握を行う。
これは、設置計画する前のシーズンから準備を進める必要がある。ゲレンデ照明は起伏、傾斜、積雪等の影響を考える必要性があるため、実際にゲレンデを滑走してみなければ問題点や課題点が見えてこない。それに加え、人間の目はとても高機能であり、暗い場合瞳孔が開きその環境に適応する優れた機能が備わっている。 下の写真は、現状の感じにできるだけ近くなるように露出とシャッタースピードを変え、モニター画面と実際目で見た風景が同じになるように工夫した。しかし、後から写真を見るとかなり暗く感じ、実際はそれほど暗くは感じない。
照度は、照明が当たっているところで100ルクス。当たっていないところで20ルクスくらいの値が表示された。だが、雪の反射もあることや周囲の明るさが影響し明るさ感を感じることもあり実際より明るく感じる。
ゲレンデ内に設置してあるポール毎に全て測定する。これを基に照明設計を開始する。
② 照明設計
現状の施設の照明はメタルはライドランプ(メタハラ)の1000Wを使用している。配光角度は広角がほとんどであるが、電球がクリアーを設置している箇所は指向性が付き局所的に明るくなりムラが生じている箇所もいくつかある。これはゲレンデが白くならなけれわからない。(夏場の草ボウボウではわかるはずもない)
さて、現状が見えてきたことを踏まえて、実際の照明設計に入る。現状はメタハラの広角が設置してあり、それをLED化する。LEDは指向性があり、配光角度をどう検討するか?LEDのワット数をどのあたりで設定する?かの2点が論点とした。照明メーカーを3メーカーに絞りカタログスペック値でまず検討。そして2メーカーそれぞれスペック値の近い器種を選びサンプルを取り寄せ1メーカーに決めた。実際に滑走しながら、ワット数と角度の検討を行った。これは、過去の照明設計の経験値と以前スキー場のパトロールの仕事をしていた経験を基にして現状の課題点を克服するための照明設計を行った。ワット数2種類、配光角度6種類、計12種類のバリエーションの中からポール毎の割り付けを行った。
照明器を選定する際の優先順位は、①重量、②配光角度、③パワー ④製造メーカーの信頼性、⑤納入実績 ※ 器具本体よりも電源ドライバーに着目することも必要な要素。
下の⊡はHIGHワット。〇はLOWワット。間引けるところは照明を省き省エネする。
③ 照度シミュレーションソフトに入力。
おおよその方向を設定し、推定積雪とポールの設置位置から高さを割出した。
上記の照度分布図にするまで、数回の照明設計をやり直した。一昨年、ひとつのポールに22灯の投光器が設置してある施設の照明を16灯に間引きLED化した。その際同じように照度シミュレーションソフトを使った。ワット数と配光角度を考えて設計したが、実際の照度はシミュレーションソフトの1.5倍強。普段使っている精度の高い照度計算ソフトでも、メーカーが開示してる照度データにはバラつきがあることがわかった。