街路灯の照明たちの声
「そろそろ時間よ」
「きたきた、点いた」
辺りが薄暗くなると明るさセンサースイッチで電気が流れ照明が点灯する。
今年の春にこの辺り一帯の街路灯が蛍光灯からLED照明に替えられた。ここの町内会だけで約百灯の新米照明たちが道路のこっち側とあっち側に設置された。同じ照明達でも性格が違い色んな考え方があってそれはそれで面白いが、そんなことは今の颯太が知る由もない。
「今日は少し早いな」
「そうね。昨日は良く晴れていたから遅かったね・・・ 今日は雨が降っているから早いと思っていたけど。まあ、予想通りってとこね」
九月になると日が暮れるのも日に日に早くなる。木百日紅(さるすべり)の赤い紅色の花が彩りその根もとには彼岸花も赤い花を付け楽しませてくれる歩道。その歩道を照らす仕事をしているのが、流山市野々下三丁目の新米の街路灯たち。今日もこんな調子で話を楽しんでいた。街路灯たちにはそれぞれ明るさを感知する照度センサーが取り付けてあり、そのセンサーがあるから暗くなれば勝手にスイッチが入って電気が流れ点灯する。大きな顔した街路灯たちもセンサースイッチがなければ点灯しないのである。そんな彼らは、夕方暗くなるころから朝方までが仕事の時間。彼らのおかげで安心して歩くことが出来る。最近は蛍光灯からLEDに変わったところも多く球切れの心配もなくなった。ちょっと眩しい気もするけど、毎日働いてくれてくれる頼もしい彼らである。まだ一年生の照明達はこれから長い間歩道を行き交う人たちが安全に安心して通れるよう暗らくなるころから朝方まで仕事をしてくれるだろう。
「ねぇ、ねぇ、私たちこの前先輩の蛍光灯からLED照明に変わったじゃない? 前はもっと明るかったような気がするの。 気のせいかしら。 それに照明の色が白くて。 明るさが足りないからかなんか陰気くさくって私、この場所があまり気に行ってないのよね」
「そうだなぁ。 白い色で照度が低いと確かに陰気で薄暗い。歩道を照らす照明はもっとホッとする感じにしてもらいたかったなぁって思う。 電球色の色なら寒々しくないし、陰気臭さもなくなる。暖かい感じの歩道は防犯上にもいい感じがするけど・・・ LED照明に決めたお役人さんたちはそこまで気が付いてくれなかったってことさ。 とても残念なことだから、これから蛍光灯の街路灯がLEDに変わる時は電球色の照明になって欲しいと願うね」
「へぇ、そういうことだったのね。 照明の色でずいぶん雰囲気が変わるってことね。 でも私たち、LEDに変わったばかりだから当分はこのまま白い光りで歩道を照らさなければならないってことは・・・ ちょっと残念だけどしょうがないわね」