「光のTPO」
~ 心地よさと空間デザインと照明の関係 ~
照明は明るさを取る道具から演出と心地よさを得るインテリアアイテムに進化しました。
宿泊施設、レストラン、ショッピングモールは明るさをコントロールし居心地の良い空間を戦略的に作っています。その演出効果が照明でコントロールされていることに来場者はほぼ気が付きません。その場の時間、場所、場面に合わせた空間に適した「ちょうどいい明るさ」を考えます。光のTPOですね。
空間デザインにおいて、「ちょうどいい明るさ」を作ることは人々の心理に大きな影響を与えることと考えます。そして、ちょうどいい明るさとインテリア空間の作り方にはいくつかのコツがあります。
- 照明器具を隠す理由
- 小さな面積でのインテリア素材を演出する理由
- 空間が劇的に変わるシーンコントローラースイッチを薦める理由
- 明るさを引き算で設計した時の心理変化
1つ目、「照明器具を隠す理由」
眩しさを排除すること。高齢になると、明るさが足りないよりも眩しさのストレスの方が大きくなります。間接照明や眩しさ軽減機能付きのダウンライトを選ぶことでこのストレスを感じることなないだけでなく、インテリア空間の「質」を大幅にアップグレードすることが可能。
間接照明の設置には造作が必要になりますが、器具の都合の最小寸法ではなく、現場職人の作業性を優先した造作寸法を考えます。
大人の拳の幅は約10センチ。これを基準に最小寸法を決めるなど、現場施工のし易さも考慮することで作り手のストレスがない造作寸法を決めることが出来ます。
2つ目、「小さな面積でのインテリア素材を演出する理由」
30センチ四方や50センチ四方の額縁やポスターフレームは沢山あります。絵を飾るだけではなく、タイルやガラス素材をちりばめても良いでしょう。1センチ真四角の小さなタイルを思いのまま自分なりにデザインしてもいいでしょう。ちょっとしたアート作品が出来上がります。その作品を演出する照明があると、まるで美術館のような雰囲気が出来上がります。
私の家の家族のための小さな美術館のある家
こんなことが、出来ます。しかも格安で。演出用の照明を調色タイプにすることで、春夏は寒色の色温度で爽やかに。秋冬は暖色の色温度で温かみのある雰囲気に。タイル素材に合わせた照明の色温度を選択すると良いでしょう。
3つ目、「空間が劇的に変わるシーンコントローラースイッチを薦める理由」
これは、超が3つ付くほどお薦めするアイテム。普通の暮らしの中で、照明のシーンを考えることはほぼありません。調光スイッチが付いている照明器具があるご家庭は増えてきましたが、シーンを作ることはないでしょう。
朝食のシーン、夕食のシーン、団らんのシーン、お休み前のシーン。リビングダイニングが1つの空間で、スイッチが4つ以上あればこのシーンコントローラースイッチは外せません。一度使ってみると、その便利さがあたりまえになり、後戻りできなくなるようなアイテムです。スマホがあまりにも日常生活に浸透し、ガラケーに戻ることなど考えられない。そんな感じのスイッチです。
4つ目、「明るさを引き算で設計した時の心理変化」
電気が明るくて落ち着くね。というのはあまりありません。普段よりほんの少しだけ暗さを感じる空間に身を置いたとき、あぁ、なんとなく落ち着く空間だなぁ!と感じる人が多いのも事実。
私は温泉好きなのですが、煌々と明るい夜の露天風呂は風情も何もありません。ほんの少しの灯りだけの方が良いでしょう。ちょっと想像してみてください。
大人が10人くらい入ることの出来る露天風呂があります。露天風呂を囲むように、
- 10灯の庭園灯がある。
- 5灯の庭園灯がある。
- 3灯の庭園灯がある。
さらに、
- 全方位型の照明器具が主張する庭園灯
- 光だけが照射し、照明器具の存在は極力わからないような庭園灯
さて、どの組み合わせが良いのでしょうか?
正確な答えはありません。明るさの好みは人それぞれですから。しかし、明るすぎる夜の露天風呂を好む人は少ないと思います。この場合、光を引き算することでなんとなく落ち着く空間を想像することが出来ます。
調光機能が付いたスイッチで引き算は簡単にできますから、多少明るめの器具を選んでも、後から引き算することは可能。これの明るさの引き算も心地よい空間を作るうえで必要不可欠な要素の一つと考えてます。