これから照明に求められる価値
明るさを求めるだけの照明計画の時代は終わり、これからの照明の役割はインテリアとの融合と考えます。
LED照明が急速に普及し、多種多様の照明器具の発売が背景にありますが、いままでの照明器具メーカーのカタログから器具を選定するのではなく、空間演出に照明をうまく取り入れたデザインが容易にできるようになりました。
しかし、器具の種類も多くどのように取り扱っていいか難しい面もあります。
もう一つ、建材メーカーやベンチャー企業からの照明器具も多数発売され、器具の選定や空間演出にはより専門性が高くなったと言えます。
では、どのようにすれば良いのでしょうか。
できるところは自分でやる
ざっくりと言えば、身近なところを題材に照明に対して問題意識をもつ習慣を作ること。それが照明の価値を創造することに繋がる。
例えば、レストラン。ファミレスや居酒屋でも構いません。駅の構内。ショッピングモール。どこかのショールームを題材にするのも良いでしょう。
その場所で、照明を意識して空間を感じること。
そこには、壁や床の材料があり、椅子やテーブルがあり、空間を飾る演出が随所にあります。
その空間と照明がマッチしているかどうかを感じてください。
最初はなかなか意識することを忘れてしまいますが、そのうち習慣化してきます。
チェックするには、
1.照度。明るさはちょうどいいか。明かす過ぎないか。暗すぎないか。
2.色温度。白い空間が良いのか。電球色の方が良いか。
3.まぶしさ(グレア)。光が強すぎないか。
4.意匠照明。ブラケットやペンダント、シャンデリアがほどよく主張しているか。
このあたりのひかりの使い方や問題点が見えてくると、照明がぐんと身近に感じられるようになり、改善策が見いだせるようになります。
身近な人にひかりの感じ方を聞いてみる
このあたりがわかると、自分の基準が見えてきます。自分の基準が見えると、他人に説明できるようになります。
照明を会話の材料にして、身近な友人と話をしてみよう。
友人には照明だけを意識してその空間を感じてもらい、結果をリサーチします。
自分はこう思うけど、あなたは? でもいいです。さりげなく一つの会話の一部として。
但し、自分の基準が正しいとは限りません。ひかりの好みは人によって様々で、年齢によっても好みのひかりは変化します。
自分の心地よいひかりはこうだ。 ということを伝えることができるだけで相手はそれを基準に判断します。
ここで初めて、相手との会話から、相手の好みのひかりを探る作業に入ることができます。
そうすると、人それぞれ感じ方や好みの色が違うことに気づきます。
間接照明を考える
ここまでくると照明が随分身近に感じられるようになります。 ここからは、間接照明を感じてみます。
間接照明は、明るさ感 を出したり、演出に使う場合がほとんどですが、住宅照明の場合は、主照明として設計する場合が多く、その手法も沢山存在します。
まずは、住宅の外で間接照明を探してみましょう。
意外と沢山あります。
そして、結構がっかりします。がっかりする要因はあまりにも沢山ありすぎるくらい様々です。
今までは何も感じなかったひかりがわかるようになれば、身近な間接照明のどこを直せばいいのかが見えてきます。
そこを感じることができれば、住宅の間接照明はどうあるべきかがわかるようになります。
住宅の間接照明を計画する
ここから間接照明を自分で考えてみます。
どんな光がいいか。位置は。色温度は。インテリアとマッチできるか。空間に合うか。・・・
ここまでくると、不思議なもので、ひかりが邪魔に感じることが多くなります。 さりげない ひかり が上品に感じられるようになります。
例えば、ホテルのエントランスに大きく君臨している シャンデリア
このシャンデリアで照度を確保することはなく、あくまで意匠照明です。 主役の照明は、シャンデリアの存在を活かすようにさりげなく明るさを取っています。これがダウンライトであったり、間接照明であったり、そして調光をかけて全体空間の明るさのバランスを見ます。
この考えを、そのまま住宅に当てはめると、
玄関のエントランスに貼ったタイル、 壁に作ったニッチ、 棚に置いたお気に入りのアクセサリーや小物、 観葉植物、 絵画、 写真、 さりげなくひかりで演出する。
一方で、明るさは間接照明でまかなう。 そうすることで、心地良い空間が生まれ、お気に入りのインテリアを引き立てる事が出来る。
照明の色温度は、2700K以下の電球色が望ましい。暗くしても陰気に感じることがなく、落ち着いた雰囲気を作りだしてくれる。